定期的な健康診断を受けていますか?
若い頃から定期的に健康診断を受けておくと、健康な時期の検査数値を把握しておくことができます。教科書などに記載のある「標準的な検査数値の範囲」は存在しますが、動物個々でその正常値が異なります。健康時のデータを把握していればその子の適正範囲が分かりますので、異常があった場合にも安心です。
1~6歳までの時期は、「愛犬が病気にならないと動物病院に行かない」ということも多いと思います。しかし、稀に若いうちから何らかの病気が発症していたり、飼い主さんが気づかないうちに病気が進行している場合もあります。また、6歳を過ぎたころから何らかの病気になる可能性もぐんと上がります。6歳を過ぎたら、年に2度の健康診断を受けましょう。
健康診断の検査内容
血液検査、エコー検査、レントゲン検査など、ワンちゃんの健康状態を調べる検査はたくさんあります。
7歳以上の高齢期になると病状によって色々な検査を行う必要が出て来ます。高齢になって初めて行う検査ばかりですと、ワンちゃんの負担も大きくなります。若い頃からある程度検査に慣れておくと、シニア期の検査を行う際にも安心です。
●生化学血液検査
検査項目 | 代表的な原因・病気 | |
---|---|---|
高値 | 低値 | |
総蛋白 | 脱水 骨髄腫 感染症 慢性炎症 | インスリノーマ 副腎皮質機能低下症 |
AST(GOT) | 肝細胞・筋肉の障害または壊死 | |
ALT(GPT) | 肝細胞の障害または壊死 | |
ALP | 胆汁うっ滞性肝疾患 副腎皮質ホルモン性肝障害 | |
尿素窒素 | 脱水 腎不全 尿毒素 尿路閉塞 | 肝機能低下(肝硬変、肝炎) |
クレアチニン | 糸球体ろ過機能低下 尿毒症 | 栄養失調 飢餓 |
総コレステロール | 甲状腺機能低下症 クッシング症候群 胆管閉塞 糖尿病 | 甲状腺機能亢進症 アジソン病 肝疾患 |
血糖 | 糖尿病 ストレス クッシング症候群 | インスリノーマ 副腎皮質機能低下症 |
γ-GTP | 肝・胆道系疾患 | |
アミラーゼ | 膵疾患 肝障害 腸閉塞 腎機能障害 | |
リパーゼ | 膵臓の炎症 壊死 膵管の閉塞 腎排泄の減少 | |
アルブミン | 脱水 | 栄養失調 飢餓 吸収不良 慢性肝疾患 糸球体腎炎 滲出性腸炎 |
グロブリン | 炎症や潜在的慢性感染症 脱水 慢性炎症 リンパ球系腫瘍 | 失血 胃腸病 免疫異常 |
A/G比 | 慢性炎症 肝疾患 | |
総ビリルビン | 肝胆管疾患 溶血性疾患 | |
リン | 腎不全 上皮小体機能低下症 | 上皮小体機能亢進症 呼吸低下 |
カルシウム | 腫瘍 ビタミンD濾過症 上皮小体機能亢進症 腎不全 | ビタミンD欠乏症 腎不全 上皮小体機能低下症 |
T4 | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 |
※SDMA検査とは
血液のSDMA検査で腎臓病の早期発見ができるようになりました。
従来の検査では、腎臓が75%損傷しないと分りませんでしたが、SDMAは30%の腎障害で異常値となるため、今までより早期発見・早期治療が可能になりました。
※T4検査とは
体の代謝を活発にするホルモンである甲状腺ホルモン(T4)を検査します。
高齢のワンちゃんでは、甲状腺ホルモンが分泌されなくなる甲状腺機能低下症という病気になりやすくなります。
甲状腺機能低下症になると、元気がない、脱毛、食欲不振、顔つきがぼんやりしている、肥満気味、反応が鈍いなどの症状が見られることがあります。
猫ちゃんの場合は甲状腺機能亢進症が多いです。症状は様々で、よく食べるが痩せてくる、嘔吐、下痢、食欲不振、多飲多尿、脱毛、多動、興奮、呼吸促拍など様々な症状があります。
●血球計算
検査項目 | 検査データからわかること |
---|---|
白血球数 | 細菌感染、炎症、アレルギーなど血液疾患などで増減します。 |
赤血球数 | 脱水で増加、貧血で低下します。 |
ヘモグロビン | |
ヘマトクリット | |
MCV | 貧血の原因を絞り込むための検査項目です。 |
MCH | |
MCHC | |
血小板 | 出血傾向、血栓等。 |
●UPC検査
UPC(尿中蛋白/クレアチニン比)の検査では腎臓病診断において重要な指標となる尿中の蛋白量を測定します。
蛋白量が多くなると腎不全のリスクも高まります。特に高齢のワンちゃんでは尿比重や血圧等とあわせ、定期的なUPC検査が重要です。
●エコー検査

主に心臓と腹部の検査を行います。
腹部エコー検査では、肝臓・胆嚢・腎臓・膀胱・卵巣・子宮・前立腺・脾臓など、幅広く臓器が観察できます。当院の超音波装置の性能であれば、消化管の異常の発見や膵炎の診断もできることがあります。臓器の形の異常だけではなく、腫瘍・結石・炎症などの存在も確認できます。また、それがどの位の深さの所にあるかを測定し、その組織を採取して病理検査に出し、良性か悪性かの判断もできます。
心臓エコー検査では、2つの検査を行います。
形態的診断と機能的診断です。形態的診断とは、心臓全体像の観察、心房や心室の大きさや壁の厚みの変化、色調の変化、血液を一定方向に送る働きをする弁の形の変化を観察します。機能的診断では、心臓の動きだけでは無く、血液の流れの異常(逆流)の部位の確認や逆流速度、心臓の収縮率等をはかり、心臓の機能性を評価します。その他、甲状腺、乳腺等の体表の腫瘤の検査もできます。
●レントゲン検査

臓器の大きさや形の変化を確認することができます。
レントゲン検査では下記のようなことがわかります。
- 肺炎や気管支炎などの呼吸器の病気
- 心臓の異常
- 膀胱結石や、腎臓結石の有無 など
健康診断キャンペーン時期について
普段から健康診断だけ受診いただくこともできますが、採血や検査はワンちゃん・猫ちゃんの負担になることもあります。
当院では春や秋の健診時期などで、年間2回程度、お得に受診いただける機会を設けております。そういった機会などを上手に活用してください。