避妊手術・去勢手術
高齢になると、免疫の力の低下などにより、様々な病気にかかりやすくなります。女の子の場合、子宮に細菌が侵入し、膿がたまる子宮蓄膿症にかかりやすくなります。ワンちゃんでは高齢期になると、子宮蓄膿症の罹患率が急激に上がります。また、ネコちゃんは若くても子宮蓄膿症になることがあります。
高齢のワンちゃんネコちゃんの死亡率上位に腫瘍(がん)があります。腫瘍疾患の中でも多いのが、乳腺がんでワンちゃんでは約50%、ネコちゃんでは約90%が悪性と言われています。発見が遅れると他の臓器に転移して命に係わります。
将来のためにも、若いうちの避妊・去勢手術をお勧めします。
どんな病気が予防できるか
●男の子の場合
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前立腺肥大
男性ホルモンの影響でシニア期以降(7歳以降)になると前立腺肥大が増えます。
治療の第一歩は去勢手術ですが、高齢期では若い時期と比べると麻酔リスクなどが高くなります。 -
精巣腫瘍
精巣を摘出するので、精巣腫瘍は100%予防できます。
精巣腫瘍は良性のものもありますが、再生不良性貧血を引き起こす悪性腫瘍(がん)もあります。
この再生不良性貧血は骨髄(血液細胞の工場)を破壊されてしまうので、がんを取り除いても回復が難しいです。
精巣は子犬が産まれたときはお腹の中にあり、成長とともに陰嚢に降りていきますが、お腹の中に残ったり(腹腔内陰睾・潜在精巣)、内股に残ること(鼠経陰睾)があります。この場合、精巣腫瘍の発生率数十倍になります。陰睾の場合は必ず若いうちに去勢手術をしてあげてください。この陰睾は遺伝するれっきとした病気です。
●女の子の場合
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乳腺がん
乳腺腫瘍はとても多いがんのひとつで、ワンちゃんの場合は約50%、ネコちゃんの場合は約90%の割合で悪性の乳がんと言われています。
100%の予防効果ではありませんが、早期にすればするほど予防効果は高くなります。逆に高齢期になってから避妊手術をしても乳がんの予防効果はありません。 -
子宮蓄膿症
子宮に細菌が侵入し、中で膿が貯まる病気です。
陰部から膿が出てくる開放性と、膿が中に貯まりどんどん子宮が大きくなる閉塞性があります。
閉塞性ではより子宮破裂のリスクが高まり、破裂すると膿がお腹の中にあふれ、腹膜炎をおこします。また、細菌が血管内に入り全身に回るリスクもあります。これも命に係わる怖い病気です。当院の避妊手術は卵巣・子宮を摘出する手術なので100%の予防効果があります。
病気の予防以外のメリット
●男の子の場合
- 尿スプレー・マーキングの減少
- 攻撃行動やケンカの減少
- しつけがしやすくなる
- 脱走の減少
- ストレスの減少
●女の子の場合
- 攻撃行動の減少
- 発情期のストレスからの解放
- 発情期の鳴き声や発情行動がなくなる
- 偽妊娠がなくなる
当院の避妊手術・去勢手術
●痛みの管理
痛みを感じる術前に鎮痛剤を投与することで、痛みを伝える物質そのものを減らすことが出来ます。
また、開腹する避妊手術では、複数の鎮痛剤を使います。相乗効果が得られるだけでなく、その方が一つ一つの鎮痛剤の量を減らせるため、副作用の可能性が軽減されます。また、麻酔薬の量を減らせる利点もあります。
●術中の管理
術後の感染症を防ぐため、去勢手術でも滅菌した術衣を着て、滅菌手袋をして手術を行います。
血管や腹壁などを縫う糸は時間とともに溶けてなくなる吸収糸という糸を使用し、お腹の中に異物を残さないようにしています。
また、電気メスなどを使用して術後の出血のリスクを減らし、吸収糸であっても出来るだけお腹の中に残さないように工夫しています。
避妊手術・去勢手術のデメリット
●デメリット1:子供が出来なくなる
繁殖を考えているなら、避妊手術・去勢手術は出来ません。
ワンちゃん、ネコちゃんは、子供が出来るまで何頭生まれるか予想出来ません。
生まれてくる子供の事も考えて、繁殖を考えてください。ただし、繁殖を考えていないなら、病気の予防やストレスの軽減、寿命の延長などが期待できるので、避妊・去勢をお勧めします。
●デメリット2:太りやすくなる
避妊手術・去勢手術の後は、発情に回すエネルギーが必要なくなる、また食欲が増えることがある、などで太りやすくなります。
カロリーを抑えた避妊、去勢手術後のお食事もあるので、食事を変更することで対処できます。
手術までの流れ
避妊手術・去勢手術と言えども手術は手術。初めての手術の方がほとんどだと思います。
麻酔も不安だと思います。納得がいくまで、しっかりと説明させていただきますので、遠慮せずどんなことでもお聞きください。
1診察
まずは診察で成長度合いをみます。それぞれの成長スピードが違うので、一概には言えませんが、男の子は大体4~6ケ月以降、女の子は5~6ケ月以降から手術可能です。
聴診、触診などを行います。心臓の雑音の有無や精巣がしっかり下降してきてるか確認します。
2術前検査
麻酔をかける前に術前検査を行い、麻酔のリスクを可能な限り減らします。
主に血液検査を行いますが、検査項目は年齢によって変わります。
高齢の子の避妊・去勢では術前検査にレントゲン検査などを行うこともあります。
3手術
術前検査が問題なければ、手術です。
男の子は精巣摘出手術、女の子は卵巣・子宮摘出手術です。
当院では、避妊手術・去勢手術でも、必ず滅菌の手術衣を使用し、心肺機能、呼吸機能の麻酔モニターも行います。
4術後経過
ご希望があれば、1日~数日入院することも可能ですが、通常は日帰り手術です。
抜糸まで10~14日。ほとんどの子が術後翌日からお散歩など日常生活と同じ生活が出来ます。